dept24のブログ・生田和良・大阪大学名誉教授

ウイルス感染症の話題について分かりやすくまとめます。

風しんも、麻しん(はしか)のように、数年ごとに流行を繰り返している感染症です

麻しんが、世界的流行の兆しを見せている。わが国は、これまで数年ごとに大流行を繰り返しており、これまでの3年半のコロナ禍で感染者はほぼゼロ状態であったが、今年に入りジワリと増え始めている。

 

この麻しんと同様に、風しんもこれまで数年ごとに大流行を繰り返している(図)。MRワクチン(麻しんと風しんに対する生ワクチン)を接種していない人が、麻しんウイルスに感染すると重症化する危険性がある。感染した時の切り札となる薬も開発されておらず、あらかじめの2回のワクチン接種での予防以外に、効果的な方法がない。一方風しんは、「三日ばしか」と呼ばれるように、感染しても軽症に経過することが多い。しかし、風しんウイルスに対する免疫の無い(ワクチン接種歴が無い)妊婦が感染すると、このウイルスが母親から胎児に感染(母子感染)し、先天性風疹症候群と総称される障害(先天性心疾患、難聴、白内障)を伴った赤ちゃんが生まれる可能性がある。妊婦は生ワクチンを接種できない。また、麻しんと同様に効果的な薬も開発されていない。

特に、過去に行政上の問題があり、一定世代の男性が2回の風しんワクチンを接種できていないことが、わが国の大きな課題である。このことから、昭和37年度~昭和53年度生まれの男性に、原則無料で風しんの抗体検査と予防接種が受けられる「クーポン券」が各自治体から送付されている。2019年4月から3年間の予定でスタートしたが、2022年8月で28%と、思ったほどの受診率が得られなかったため、さらに3年間、すなわち2025年3月末まで延長されている。対象人数が1,540万人なので、まだ1,000万人以上もの人が、この感染症に罹りやすく、そして次々とうつしていく可能性があるということで、大きな懸念となっている。

 

特に、この風しんウイルスは不顕性感染と言われる、感染しても症状が出ない場合が多い。したがって、ワクチン接種歴がなく、抗体を持っていない状態でこのウイルスに感染しても、症状が出ないので本人は感染している自覚のないまま、家庭や職場で妊娠している女性ににうつしてしまう可能性がある。

 

これから結婚予定や、子どもを産みたいというカップルは、まず母子手帳で2回の風しんワクチン接種歴が確認できない場合には、必ずワクチン接種されることをお勧めする。