dept24のブログ・生田和良・大阪大学名誉教授

ウイルス感染症の話題について分かりやすくまとめます。

麻しん(はしか)の感染者数がジワリと増えています

新型コロナウイルスの感染者が増えており、「この感染症は普通の感染症ではなく、油断できない。もう第9波に突入だと、2類から5類へ格下げにしたことが原因だ」と、いわゆる専門家は相変わらずこの感染症に執着しておられます。

 

ただ、この感染症は世界的にも既に収束に向かっているという認識で一致している。これまで3年以上にも及ぶコロナ禍で、免疫の低下も世界的に大きく進んでいる。そんな中、子どもの麻しんや風しんのワクチン(MRワクチン)の接種率の低さは世界保健機関(WHO)の大きな懸念材料になっている。

 

過去の麻疹患者数を見ると、2019年まで世界的にも年々増加傾向であった。しかし、新型コロナが出現した2020年から、世界的にほぼゼロに近い患者数になっていた。ところが、2022年から患者が増え始め、2023年になると世界的に大幅に増加している。わが国においても、麻しんの感染についてメディアで騒がれ始めている。

 

麻しんウイルスは空気感染することから、どのウイルス感染症よりも周辺の人にうつしやすい。現在、新型コロナウイルスは、1人の感染者が1~2人に、インフルエンザウイルスは1~3人にうつす。しかし、麻しんウイルスは12~18人にうつすことから、大幅にうつしやすいウイルスであることが分かる。このウイルスに効果的な抗ウイルス薬は開発されておらず、2回のワクチン接種でのみ感染防御効果が認められている。言い換えれば、この方法しかないのが現状である。わが国には、30~40歳代の人たちの中に、麻しんワクチンを1回も接種していない、もしくは1回しか接種していない人が存在する。この人たちの間で感染が拡大することを数年ごとに繰り返している。

 

国立感染症研究所からの情報では、2023年6月28日現在、19名の患者が確認されている。これらの患者のうち11名は2回のワクチン接種ができていない人たちである(5名はワクチン接種歴が不明)。3名は2回のワクチン接種歴があったが、免疫低下が進んでいたのか、感染した。しかし、ワクチン非接種者に比べると症状は軽く、修飾麻しんと呼ばれる状態であった。これらの多くは海外からの輸入感染症と考えられており、これまではインドネシア、タイ、インド、モザンビーク由来であることが示されている。

 

過去の感染者数(図)をみると、じわじわと増え始めると数ケ月を経てドカーンと大幅な増え方をする。麻しんウイルスは、今の変異した新型コロナウイルスに比べ物にならないほど、重症化する可能性が高い。ワクチン接種歴について母子手帳で確認し、もし2回の接種が確認できない場合には、早めにワクチンを接種することで自分自身と周囲の人を守ることができるのです。