dept24のブログ・生田和良・大阪大学名誉教授

ウイルス感染症の話題について分かりやすくまとめます。

手足口病の季節

 手足口病は、字のごとく、手と足、それに口に同じようなコメ粒ほどの小さな水泡(水ぶくれ)ができる病気で、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスによる感染が原因である。子どもが罹ると、親に感染することが多い。また、このウイルスには多くの型があり、抗体が共通ではないため何回も感染する。

 

 コクサッキーウイルスが原因であるヘルパンギーナという病気もあり、症状はほぼ同じであるが、水泡が喉(咽頭)にだけできる。原因も症状も似ているので、国によってはひとつの感染症として扱っている。

 

 どちらも発熱を伴うことが多く、水泡ができて大変であるが、比較的軽い病気である。数年ごとに流行し、手足口病ヘルパンギーナが同時に発生する年は少ない。

 

 これらの感染症の原因となるエンテロウイルスとコクサッキーウイルスは、エンテロウイルス属と総称される。このエンテロウイルス属には、他にエコーウイルスやポリオウイルス(小児麻痺の原因となる)が含まれる。最近、このエンテロウイルス属に含まれるウイルスが、髄膜炎脳炎、心筋炎などに関係していると報告されている。また、1型糖尿病にも関係しているとして研究が進められている。このエンテロウイルスに対するワクチンが、糖尿病の発症を予防するワクチンとしても有効と考えられ、開発が進められている。

 

 子どもの感染で問題となるのは、発症前数日から発症後も4~5週間、しかも症状回復後も咽頭や便から感染性のあるウイルスが排出されている。そのため、登園・登校について医師の判断を仰がなければならない。

インフルエンザワクチンについて

 インフルエンザの原因であるインフルエンザウイルスには、A型、B型、C型がある。B型とC型はヒトにだけ感染し、A型はヒト以外にも、トリやブタなど、ほとんどの動物に感染する。したがって、A型が変異しやすく、重症化しやすい。通常、毎年秋から広がり始め、2月ごろにB型と入れ替わることが多い。C型は、子供の間で広がりやすく、いわゆる風邪のひとつになっている。したがって、インフルエンザワクチンは、A型とB型のウイルスに対する免疫をあげるために作られている。

 

 インフルエンザウイルスのA型には多くの亜型が存在する。ウイルス粒子の表面に発現しているヘムアグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)が、A型の亜型を決めている。HAが16タイプ、NAが9タイプ存在し、その組み合わせで合計144(16 x 9 = 144)の亜型が発生する可能性がある。このうち、現在、ヒトの間には2009年に発生した、ブタ由来の遺伝子の一部を持ったHAが1型、NAも1型のH1N1のウイルス(2009年に世界流行型となり、世界的にはH1N1pdm09、日本では新型インフルと呼ばれている)、そしてHAが3型、NAが2型でH3N2型(香港型と呼ばれている)の2つのタイプのウイルスが流行している。一方、B型は山形系統とビクトリア系統の2つのタイプが流行している。

 

 これら2つのA型ウイルスと2つのB型ウイルス、計4つのウイルスが混合され、ワクチンとして毎年製造されている。ここ数年はこれら同じ型のウイルスが流行しているが、少しずつ遺伝子に変異が起こっているため、次の季節にはどのようなウイルスが流行するのかが検討され、国立感染症研究所が決定し、ワクチンメーカーはその決定されたウイルス株を用いてワクチンを製造している。

 

 インフルエンザのワクチン候補として選定された4つの株は、21日目にヒヨコが生まれる発育鶏卵(ニワトリの有精卵)に接種して、ウイルスを大量に生産する。発育鶏卵を温め始めると、血管が発生し、それに伴って鶏胚が成長し、羊膜という透明で薄い膜の中で卵黄と卵白を栄養分として、日々育っている。温め始めて11日目にウイルスを接種し、その後3日ほどすると、血液をろ過した際に生じる尿(漿尿液)をためておく場所である漿尿膜中に、大量のウイルスがたまってくる。この漿尿膜を集めて、ウイルスを精製する。上記4種類のウイルスをそれぞれ精製し、これらを混ぜてワクチンとして製造している。

 

 このように毎年、インフルエンザワクチンの製造には大量の発育鶏卵が用いられている。1人分のワクチンに、1~2個の発育鶏卵が必要と言われている。ところが、昨年秋から今年春にかけて、各地の養鶏場で鳥インフルエンザウイルスに感染し、鶏舎内の鶏すべてが処分されるという事象が相次いだ。したがって、場合によってはインフルエンザワクチンの製造に十分な発育鶏卵を準備できない状況になるかもしれない。そこで、大きなタンクを用いて培養した細胞で、インフルエンザワクチンを製造する方法も検討されている。

 

カクテル療法は、初めエイズ治療の画期的な発見としてスタート

 このほど厚労省により認可された新型コロナの治療薬は「抗体カクテル」と呼ばれている。

 

 いわゆる「カクテル療法」は、1990年代に発見された、エイズの治療法である。1981年にエイズ(AIDS, Aquired Immunodeficiency Syndrome; 後天性免疫不全症候群)という原因不明の病気が見つかり、その原因究明に2年を要し、1983年にフランスのパスツール研究所の研究グループによってHIV(Human Immunodeficiency Virus;ヒト免疫不全ウイルス)がその原因であることが報告された。

 

 この治療には、当初単一の薬剤が使われていた。現在の新型コロナウイルスと同じく、他の感染症やがんの治療を目的に開発されていた薬剤(多くのボツになっていた薬剤も含め)の効果を調べ、エイズ治療目的に転用されていた。しかし、多くの薬剤が、使い始めは効果的であったが、だんだんと効きが悪くなっていった。すなわち、処方されていた薬剤が、HIVが増えるのに必須であるHIVたんぱく質を攻撃するために、このたんぱく質の情報を記録している遺伝子に変異が起こったものが発生し、この変異株がだんだんと主流になり、それらの薬剤の効果が低下していった。

 

 そもそもウイルスは、どんどん増えることが仕事である。まず、ウイルス粒子の表面のたんぱく質HIVの場合にはgp120と呼ばれるたんぱく質)が、受容体となるCD4を表面に発現している免疫細胞を見つけて、gp120-CD4を介して細胞に吸着し感染を成立させる。その後は、その感染した細胞を使って、持ち込んだウイルの遺伝情報(ゲノム)にしたがってそれぞれの役割を担ったたんぱく質を作らせ、そしてそのウイルスたんぱく質を作るためのゲノムもコピーをたくさん作らせる。その後は、ゲノムを包み込む形で粒子を形成する。このウイルスのゲノムのコピーを作る段階で、読み間違いを起こしてしまう。この読み間違いが変異株の出現につながる。その読み間違いは、ある一定の頻度で起こる。HIVの場合は9,000個のヌクレオチド(遺伝情報を蓄えるゲノムの基本単位)でできているが、この9,000個を読む間にどこか(ランダム=決まってなく、でたらめに)1ヵ所だけ読み間違える。読み間違えた場所によっては、次の世代を担うウイルスにはなれずに淘汰されてしまうが、上記のような薬剤によって攻撃されている場所を読み間違えた場合には、その薬剤の影響を受けずに、しかも次の世代を担うための増殖力も維持したウイルスが出現し、薬剤が投与されても、ほとんど影響を受けずに増え続ける、まさに変異株の出現となる。

 

 ここで、この変異株が一定の頻度で出現することにヒントを得て、2-3ヵ所を攻撃する何種類かの薬剤を同時に投与することを試したところ、画期的な効果が認められた。これにより、カクテル療法とか多剤併用療法と呼ばれる治療薬が誕生した。

新型コロナが収まると、次に現れる感染症は?

 2020東京オリパラがまもなく始まる。新型コロナの感染状況は収まるどころか、第5波が本格化しそうな勢いである。しかし、高齢者の多くはすでにワクチン接種をすませ、感染者数は増えているが、死亡者数は減っている。働き盛りの人たちが、変異株に感染したことによるのか、重症化しているとの報道も多いのが気になるが、この世代の人たちも、まもなくワクチン接種を受けられるだろう。

 

 このように、今のところ、ワクチン接種を各世代に行きわたらせることで、感染者数を減らし(このワクチンで感染を完全に遮断することはできなさそうである)、しかも重症化例も減らせることが期待できる。

 

 新型コロナウイルス感染症が、近い将来、大きな問題にならないような状況になるのだろうか?実際、そのような世の中になると、次にはどんな感染症が顔を出すと考えられるのか。そのような状況になっても、手洗いやマスクを、少なくとも日本ではかなりの人が励行し続けるのではないだろうか。そうなれば、インフルエンザもノロも顔を出しにくい状況であろう。

 

 では、大きな感染症は当分なくなるのであろうか。ここで、世界保健機関(WHO)は警鐘を鳴らしている。どこかで顔を出そうかと、状況を伺っている感染症として「麻しん(はしか)」を挙げている。麻しんは空気感染で広がっていく典型的なウイルス感染症で、世界的にも、なかなか根絶が難しい感染症である。新型コロナウイルスも「エアロゾル」、すなわち空気感染に近い伝播ルートがあると言われているが、麻しんほどではない。しかし、麻しんには非常に効果的なワクチン(弱毒性の生ワクチン)が存在する。2回のワクチン接種をしていればまず感染しない。ワクチンが開発されてから数十年も経っているが、その有効性はほぼ変わらず、新型コロナウイルスのように、変異株には効きが悪い、といった懸念がない。2015年、WHOの西太平洋地域事務局から「日本は排除状態にある」と認定された。これは日本の土着型の麻しんウイルスによる麻しん感染が、36ヶ月以上にわたって阻止されていることが認められたことによる。しかし、実際には、今なお麻しん流行国からの輸入感染症として、持ち込まれ、もしくは持ち帰られたウイルスによって、数年ごとに大流行している(直近では2019年の744例、図参照;その前は2008年の11,005例)。この流行を引き起こしているのは、2回のワクチン接種を行っていない人たちである。感染者の多くは、ワクチン接種を受けたかどうか覚えていない、1回しか受けていない、まったく受けていないなどの人たちである。

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麻しんの患者数(2014年-2021年7月7日)

 国立感染症研究所が発表している感染症発生動向調査によれば、図に示すように、新型コロナが発生した2020年は13例で、本年は2例である。近い将来、新型コロナが大きな問題ではない状況になると、経済活動が優先されるだろうから、海外へ、そして海外から訪問する人たちが急激に増えることが考えられる。そうなると、容易に麻しんウイルスが日本に上陸し、免疫が不十分な人たちの間で広がっていくことが想像できる。

 

 特に、新型コロナが発生して以来、小児の麻しんワクチン接種率が低下しているようである。懸念されるのは、麻しんには有効な抗ウイルス薬が開発されておらず、小児が麻しんに感染すると死に至ることもある。感染した人と接触した場合(濃厚接触者)、接触後3日以内であれば直ちにワクチン接種することが勧められている。3日が過ぎてしまっても、接触後4日~6日までであれば、発症を予防できる可能性があるとして、献血血液から製造されたイムノグロブリン製剤を投与することが勧められている。

夏風邪と冬の風邪:風邪ひきは冬の定番だが、夏にも風邪と呼ばれる感染症がある

 「夏風邪」とまとめて呼ばれる感染症は、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、アデノウイルスに感染した場合に、風邪様症状がみられることからこのように呼ばれている。丁度これからの季節、6月末から夏にかけて流行する。

 コメ粒ほどの小さな水ぶくれ(水泡)が手、足、口にできる手足口病、また同じような水ぶくれが口の中の上あごの奥の粘膜にできるヘルパンギーナという感染症がある。

 どちらも、エンテロウイルスや、これに類似のコクサッキーウイルスに感染することが原因である。発熱を伴うことが多いが、それほどの重症になることは少ない。インフルエンザのように、毎年流行する感染症ではなく、数年ごとに流行する傾向がある。

 アデノウイルス感染によっても、夏風邪のひとつであるプール熱(プールの水を介してうつることが多いので、このように呼ばれるが、正式には、咽頭結膜熱)と呼ばれる感染症を引き起こす。のどや目の感染症で、のどの痛み、目の充血、発熱などの症状がみられる。

 ウイルスの分野では、エンテロウイルス属と総称的に呼ばれる分類があり、この中にはエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスなどが含まれ、さらに急性灰白髄炎(小児麻痺)の原因になっているポリオウイルスも含まれる。エンテロウイルスやコクサッキーウイルスは、さらに多くの種類に分かれる多様なウイルス集団である。そのため、すべてのウイルスに共通の効果的な抗体が作られず、何回も感染してしまう傾向がある。

 アデノウイルスにも多くの型が存在し、咽頭結膜熱の原因となっているアデノウイルスのほか、流行性角結膜炎(はやり目)の原因になっているウイルスも存在する。このような夏風邪の原因となるもの以外に、急性胃腸炎を起こすもの、また呼吸器に感染し、発熱やのどの痛みだけではなく、肺炎や気管支炎の原因にもなる(下記の冬の風邪の一種)。

 

 これら、エンテロウイルス属のいろいろなウイルス、その中の、アデノウイルスも消化器に感染するものが多く、ウイルスの外側のエンベロープ膜(脂肪層)を持っておらず、したがってアルコール消毒が効かないため、次亜塩素酸ナトリウム液での消毒が必須である。

 

 夏風邪とは異なり、一般的に思い描く「風邪」という感染症は冬の病気である。この風邪の原因となるウイルスも、現在、世界中に広がっている新型コロナウイルスSARS-CoV-2)の仲間のコロナウイルス(一般にヒトコロナウイルスと呼ばれているもので、4種類のウイルスが知られており、冬の風邪の10~20%はこのウイルスの感染が原因と言われている。他に、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、それに、現在大流行しているRSウイルス(通常は冬場の感染症で11月~12月がピークと言われていた。しかし、2016~2019年では夏場の感染症となっていた)などがある。

 

 

ウイルス性感染性胃腸炎(ノロウイルス)

 ノロウイルスは秋の終わりごろから冬の中頃までが流行期間で、小児に多い感染症である。このウイルスに感染すると、2~4日の潜伏期間の後に1~2週間もの長期にわたる発症期間を迎える。症状は、腹痛、下痢、胃痛や胃痙攣、頭痛、発熱などである。

 

 特徴は、10~100個程度のごく少量のウイルスでも、人に感染することである。ところが、感染した人の便や吐しゃ物の中には、大量のウイルスが含まれている。したがって、不十分な手洗いなどが原因となる接触感染(糞口感染ともいわれる)が、主な感染伝播ルートとなる。ただ、絨毯などに吐しゃされ、慌てて乾燥させようとした場合には、空気中にたくさんのウイルスが舞い上がり、空気感染を起こすことも報告されている。また、下痢症状で医療機関を受診した患者が使用したトイレのドアノブなどを触ったために、別の病気で受診した患者が感染する、いわゆる二次感染例が多く見られた。

 

 このウイルスには効果的な抗ウイルス薬はなく、また予防のためのワクチンもない。人には簡単に感染し、腸管の細胞で凄まじい勢いで増えるのであるが、実験室で培養細胞を用いて増やそうとしても、なかなかうまく増えてくれない。このため、抗ウイルス薬やワクチンの研究を行う実験系がないことから、その対策が遅れている感染症である。

 

 問題なのは、このウイルスは、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスのように、ウイルスの表面にエンベロープと呼ばれる脂肪の膜を持っていない。したがって、アルコール消毒では効果がない。このノロウイルスの広がりが問題となった初期のころは、この点の啓発が不十分で主にアルコール消毒が行われていたことから、二次感染例が多発していた経緯がある。

 

 ノロウイルス対策として重要なのは、次亜塩素酸ナトリウム(市販の家庭用塩素系漂白剤・ハイターやミルトンなどを薄めて使用)での消毒が必須である。また、アルコール消毒は効かないが、石鹸をつけて丁寧な手洗いを数回繰り返すと、ほとんど流せるので効果的という実験結果もある。

 

 もう一つは、繰り返し何回も感染することである。しかも、感染を繰り返していると、体内でウイルスを産生して放出していても、自覚症状がない、いわゆる無症状、もしくは不顕性と呼ばれる感染状態になりやすくなる点も問題である。最近では、調理担当者は症状の有無では判断できないので、定期的に検査し、感染の有無を確認するように義務付けられている。

 

 

季節外れのRSウイルスが大流行しているようだが、どんな感染症?

 

RSウイルスはどんなウイルス?

 RSとはレスピラトリ シンシティアル(respiratory syncytial)の略で、「呼吸器合胞体」と翻訳される。培養細胞に感染させると、ウイルスが感染して増えるに伴い、感染した細胞同士がくっついて大きな細胞、すなわち細胞融合した多核の巨細胞(これを合胞体という)が作られるので、この名が付けられている。乳幼児に発熱や鼻水などの症状を引き起こす、呼吸器の感染症の原因となる。

 生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の乳幼児が感染すると言われている。初めての感染で誘導される免疫が不十分で、その後の感染を完全には防御できないため、何回も感染し、発病を繰り返すことが多い。

 通常は冬場に流行し、11月から12月にピークを迎える。近年では、夏に流行する傾向が見られることがあったが、2021年の今年は、これまでの流行期とは異なる4月に大流行している。図にみられるように、富山県大阪府、福岡県、佐賀県長崎県熊本県、宮崎県で大流行している。

 

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図(大阪府済生会中津病院感染管理室室長・国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員・安井良則先生の記事から引用)

 

 多くは軽症で経過するが、一部は咳がひどくなり、喘鳴(ぜいめい)と呼ばれる「ゼーゼー」「ヒューヒュー」などと表現される呼吸をするようになる。このような場合には、時に重症化するので気をつける必要がある。初めて感染する乳幼児の多く(70%)は数日で軽快するが、残る30%は重症化する場合がある。

 乳幼児だけではなく、成人にも感染する。多くは繰り返し感染する例が多く、免疫を持っているので軽症に経過することが多い。ここで大事なポイントは、成人でも免疫力が落ちている場合には重症化する可能性があり、中には死亡例も報告されている点である。

 感染ルートは、感染した人の周辺にいることで、感染した人が発する咳やくしゃみ、さらに会話を交わした際に飛び散るしぶき(飛沫)をあびたり、吸い込んだりすることで感染する、いわゆる飛沫感染が多い。同時に、飛び散った飛沫が付着しているドアノブなどを触った手で、自分の鼻や口に触れることで感染する接触感染も考えられる。したがって、こまめな手洗いはもちろんであるが、赤ちゃんが遊ぶおもちゃなども、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムによる消毒や熱消毒が大事である。

 

 抗ウイルス剤がなく、安全で有効なワクチンも開発されていない。対症療法のみである。

 特筆すべきは、ウイルス感染症分野では唯一実用化されている抗体医薬が存在する。シナジスと呼ばれるモノクローナル抗体を使った抗ウイルス療法である(ワクチン接種では接種して数週間後に有効な抗体が作られるが、これと同様の効果が期待できる抗体を投与するので、即効性のワクチンともいえる。ただし、有効性があるのは1ヶ月なので月1回の頻度で投与する必要がある)。これは工場で大量生産しておいて、日本では、感染すると深刻な状態になる可能性のある、次のようなハイリスクグループに、医師の判断のもと、予防的に保険適用により投与可能となっている。

  • 在胎期間(出生時の妊娠週数)が28週以下で、12ヶ月齢以下の乳幼児
  • 在胎期間が29週~35週で、6ヶ月齢以下の乳児
  • 過去6ヶ月以内に気管支肺異形成の治療を受けたことがある、24ヶ月齢以下の乳幼児
  • 24ヶ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患の乳幼児
  • 24ヶ月齢以下の免疫不全を伴う乳幼児
  • 24ヶ月齢以下のダウン症候群の乳幼児